2008年03月09日
「贖罪」 イアン・マキューアン


「贖罪」 イアン・マキューアン 新潮文庫
★★★★★
1935年、大学を卒業し帰省したセシーリアと幼馴染のロビーはつまらないことから諍いを起こしてしまう。それを目撃したセシーリアの妹、ブライオニーはある誤解をし、その誤解が彼らの運命を左右する事件を引き起こしてしまった…という話。
感想を書く前に書いておきますけど、この小説を未読の方は、以下の感想は読まないほうがいいかも。先入観のない状態で読むことをおすすめします。
この小説を読み終わってから一日たった今でも、まだ興奮がおさまらない。何から書き始めればいいだろう?
マキューアンの小説を読んだのは、はじめてだったんだが、とにかく精密というか、緻密というか、丹念に文章を書いていく作家のかなと思った。特に第一部で、すべての登場人物の意識の流れを丹念に、丹念に書いていく筆致はもどかしくもあり、格調が高くもあった。
第二部以降は第一部とはうって変わって、スピーディーかつドラマチックな展開。ロビーの敗走はピリピリと緊張感が伝わってきたし、ブライオニーの治療のシーンの容赦のないくらい精密な描写には息を呑んだ。
そして、「1999年、ロンドン」の章。あえて「エピローグ」と題されていないこの章で何が起こるのか。第三部の最後に記された記述は、物語が一筋縄には終らないことを予感させる。彼女の罪は許されるのか、誰もが思い描くハッピー・エンドは訪れるのか、その方向に興味が傾いたときに明かされる衝撃の真実。
…茫然としてしまった。「贖罪」というタイトルは、そういう意味だったのか…。すべての文章を読み終えた時、体が痺れたようになって動けなかった。目を閉じ、そして目を開けたとき、涙が溢れてきた。
なんという、なんという甘美なラヴ・ストーリーなんだろう。甘美であるがゆえに、あまりにも切ない…。
読み終わったあとでも、余韻というには大きすぎるぐらいの読後感に襲われ、何度も、何度も思い返してしまった。
「待っています。戻ってきて」というセシーリアの言葉が頭から離れない。

